公開日 2023年11月12日 最終更新日 2024年2月22日
登場人物の役割シリーズも
ついにラストですね
主役・味方・敵の3種類しか
知らなかったから為になったわ♪
まぁ、その3つに要約できるんやけど
細かく知ってた方が便利やん?
ところでミカ姉
10人いたマンガの登場人物は
何人に減りましたか?
依頼者が協力者になって
敵対者に豹変した後に
犠牲者になったから・・・・・・
1人にえらい役割持たせるんやね
別に無理矢理すべて取り入れる
必要はないのでは?
えへへ♥
欲張っちゃった♪
で、結の小説はどや?
残りの4種類を聞いてから
筆を執りますよ
よっしゃ
今回は援助者の説明もあるし
張り切って行こか!
10種類の登場人物の役割をみていこう
今回は後編、ラストです。
残りの4つの役割をお伝えしていきます。
クリックで項目に飛べるようになっているので、興味がある部分から読んでくださいね。
役割①共感型主人公
共感型主人公の具体例
役割②憧れ型主人公
憧れ型主人公の具体例
共感型主人公と憧れ型主人公の比較
役割③協力者
協力者の具体例
役割④敵対者
敵対者の具体例
役割⑤犠牲者
犠牲者の具体例
役割⑥依頼者
依頼者の具体例
↑
こちらは前回までの記事です
今回はこちらの記事です
↓
役割⑦援助者
援助者の具体例
役割⑧対抗者
対抗者の具体例
役割⑨判定者
判定者の具体例
役割⑩庇護対象
庇護対象の具体例
援助者
援助者という呼び方はあまり聞き慣れないかもしれません。ですが、指導者・メンター・師匠・賢者などの名称はご存じの方も多いでしょう。
特に自己啓発界隈では、自分を成長させてくれる人をメンターと呼び、師と仰ぐ文化がありますね。
成長するための方法として有名な『守破離』という考え方があります。その最初の段階においても、師に型を教えてもらうことは有効とされています。独学で学ぶことの失敗や陥りがちな問題を師が指摘してくれるからです。
物語においては、主人公が乗り越えられない困難や挫折を克服するためのヒントや忠告・経験などを援助者は与えてくれます。
良い援助者に出会えるかどうかは、主人公にとって非常に重要な意味を持ちます。主人公の信念や方向性に強い影響を与えるからです。
それでは、援助者を作る時のポイントを3つ紹介します。
ポイント①主人公の目的達成を助ける
前の記事でも説明しましたが、協力者と援助者の役割は似ています。
違いとしては、協力者は主人公と似た立場で一緒に目標に向かう存在であり、二人三脚のパートナーに近いです。一方で、援助者は主人公にアドバイスを与えてくれるコーチにあたります。
協力者→主人公との関係性が対等で、立場の上下関係がない
援助者→主人公のピンチを助けてくれて、立場が強い場合が多い
援助者の活躍はあくまでも、アドバイスやヒントといったサポートに留まらなければなりません。もし、援助者が表に出てきて代わりに目的を達成してしまうと、主人公の活躍の場がなくなってしまいます。
主人公の問題は自分自身で解決しないといけません。そうしないと、誰の物語なのかわからなくなってしまいますから。
援助者が助けてくれる方法は『知恵・アイテム・技術』といった間接的なものであると覚えておいてください。
そして、援助者の設定ですが主人公の先を行く存在にしましょう。簡単にいうと経験者であり、少し難しくいうと未来の主人公ですね。
主人公の未熟な部分を見抜いて助けてくれる存在なので、年上のベテランの方が説得力が生まれます。人生経験が豊富なキャラクターの方が、言葉にも重みがありますので。
もちろん、そういったセオリーを逆手に取って、幼い子供や未熟者に助言を語らせるというテクニックもあります。ですが、説得力が弱くなりご都合主義だと思われる危険性があるので、使い方には気を付けなくてはなりません。
説得力について参考になる書籍から引用します。
賢者キャラの持つ説得力が、主人公の実力を飛躍的にアップさせることの「説得力のある理由」になりやすいからです。説得力のないキャラクターには、こうした役割は担えません。
ゲームシナリオの書き方 基礎から学ぶキャラクター・構成・テキストの秘訣 P.120:経験者による説得力
試しに言葉の重みの違いを比較してみましょうか。
小学生男子「人生は苦難に満ちている」
戦争経験のあるお爺さん「人生は苦難に満ちている」
同じ言葉でも意味合いが違うことが伝わりますでしょうか?
言葉の意味は同じでも価値が全然違いますよね。
『援助者は主人公の目的達成を助ける』。
助けるだけで代わりに活躍してはいけません。そういう意味でも、援助者は現役を退いた年配者にするのが都合が良いですね。物語の途中で退場するのが理想です。
主人公は、援助者の後継者であり、越えていく存在である。
多くの物語に採用されている王道の構造ですね。
ポイント②子供や動物など主人公よりも優れているとは限らない
援助者も他の役割と同様に、人間である必要はありません。
自然・動物・アイテム(道具)・言葉・概念といった要素が援助者になることもあるのです。
また能力的に必ずしも主人公より優れている必要はありません。
先ほど、援助者は説得力を考えると経験者が良いと書きました。
確かに説得力の観点でいうとそうなのですが、物語の幅を狭めてしまいかねないですよね。
例えば、新人作家の作品が集まっているマンガ冊子を読んでみたとしましょう。そこで10作品中10作品において主人公の困難を救うのが、ベテラン経験者のありがたい言葉だったらどうでしょう?
確かに説得力はあるかもしれないけど、食傷気味ですよね。
○経験豊富な年配者の方が説得力がある
×同じパターンばかりだと物語としてつまらない
この矛盾を解決する方法があります。
それは子供や動物などが援助者の場合は、一つのことしかできないと決めておくのです。
言葉や行動に説得力がないのなら、説得力を持たせればいいのです。
ある日
小学生男子「人生は苦難に満ちている」
次の日
小学生男子「人生は苦難に満ちている」
主人公が絶望している時に横に来て
小学生男子「人生は苦難に満ちている」
毎日同じことを言っているのであれば、この小学生男子に信念があるとわかります。主人公がその言葉を聞いて立ち直るきっかけになっても、ご都合主義だとは思いません。
つまり、年配者のようにどんなことにでも含蓄のある言葉を与えることはできなくても、一つの真理なら伝えられるというわけです。
ただ、小学生男子がこんな台詞を言うのは不自然なので、別の方法で援助者にするのが良いですけどね。
例えば・・・・・
公園で少女に花束を渡す小学生男子。少女は花束を投げ捨て去って行く。少年落胆する。
それを見て主人公は苦笑い。
「今の俺と似ているなぁ・・・・・・」
しかし、少年は散らばった花束を集めて、もう一度少女に渡しに行く。
それを見て主人公は感動する。
「そうだ。一回断られたくらいで諦めるなんて馬鹿げてる!!」
こういった直接的ではない方法で主人公を困難や挫折から立ち直らせる方法もあります。言葉よりも自然ですね。
他にも子供が援助者になるパターンとしては・・・・・・。
公園でいつも逆上がりを練習している子供がいる。しかし、全然成功しない。
ある日、落ち込んでいるときに公園を通ると、子供は逆上がりに成功していた。
「諦めずに挑戦することの尊さ」を感じて、私は勇気づけられた。
よくあるシチュエーションですね!
自然が援助者のパターンもあります。
大災害があって精神的に参っていた時に、途方に暮れながら歩いていたら、瓦礫の中に咲く一本のたんぽぽを見つけた。
こういった自然の美しさに、勝手に感情移入して励まされることもありますね。このたんぽぽも落ち込んでいる主人公にとっては立派な援助者です。
ポイント③闇堕ちする展開も・・・・・・
ソフォクレス作のギリシア悲劇『オイディプス王』は有名な物語です。紀元前427年頃に制作された物語で父親殺しを題材にしています。
なぜ、これだけの長い期間愛されているかというと普遍的な構造があるからでしょう。男児が父親を憎み殺そうとする心理を精神科医のジークムント・フロイトは『エディプス・コンプレックス』と名付けました。
少年・青年にとって父親を越えることは大きなテーマです。
主人公から歳の離れた男性の援助者は、血の繋がっていない父親だと考えられます。なので、多くの物語で主人公が父親や自分の師匠と戦って越えていく展開があるのです。
援助者は主人公の特技や弱点を知り尽くしているので、敵対者として立ち塞がった際には、手こずる相手です。
主人公の援助者が敵対者になる作品はアメコミに多くみられます。特に目立った作品である『スパイダーマン』を紹介しましょう。
敬愛する人の大半が悪役になる世界の主人公・ピーター・パーカー可哀想過ぎません?
なぜこんな設定になっているかというと、スパイダーマンことピーターは高校生・大学生くらいの年齢で、アメコミヒーローとしては若いんですね。
だから、敵対者は自然と年上の科学者が多くなり、ピーターと関係を深くして劇的にするために元は援助者という関係なのです。
援助者が敵対者になるパターンで多いのは、大切なものを失って悪の道に堕ちてしまうというものです。動機がはっきりしているので同情の余地があります。もし、大切なものを失ったのが主人公であれば、主人公がダークサイドに堕ちていたかもしれないのです。逆の立場だったかもしれない。
主人公の一番の味方だった援助者が敵対者に変貌する展開は大きな意外性を持ちます。どんでん返しとしても活用できるのでお客様にインパクトを与えたいなら是非使ってみてください。
悪に堕ちた援助者は主人公に倒されて、最期に優しかった面影を思い起こさせます。
『援助者→敵対者→犠牲者』という美しい役割交代リレーですね。
援助者の最後の教えは自らの命を賭して授けるということです。
まぁ、反面教師ですけどね。
援助者の具体例
『グッド・ウィル・ハンティング/旅立ち』は1997年に製作されたアメリカ映画です。映画好きには有名な作品なので、観たことがある人も多いでしょう。人間ドラマを丁寧に描いた傑作です。
特筆すべき点は、今作の脚本は今や有名になった二人の俳優が書き上げたというものです。『ボーンシリーズ』のマット・デイモンと『バットマン』を演じるベン・アフレックです。
第70回アカデミー賞の脚本賞を受賞しています。演技だけでなく、脚本も書けるなんて凄いですね。助演男優賞にロビン・ウィリアムズが選ばれているのも特徴です。
簡単なあらすじ
毎日不良仲間と遊んでいる青年・ウィル・ハンティングは実は超天才だった。しかし、過去に虐待を受けたトラウマが原因で周囲に心を閉ざしていた。ある日、大学の廊下を清掃する仕事をしている時に黒板に書かれた数式の問題を解いてしまう。その天才ぶりに気付いた大学教授がウィルを更生させるために一人の精神科医・ショーン・マグワイアを紹介した。ショーンに対してウィルは反抗するが、その包容力を前にして徐々に打ち解けていく。その過程で、精神科医であるショーンも、妻を失ってできた心の傷が癒やされていくのだった。
主人公と援助者の関係では、一方的に主人公が助けられるものもあります。しかし、今作は援助者の方も主人公に助けられていく物語なのです。
それでも主人公の大きなトラウマを解消するシーンを観ると、やはりショーンは理想的な援助者だなぁと思わされます。
非常に似た構造の物語に『小説家を見つけたら』という映画もあります。こちらも才能溢れる主人公と援助者という組み合わせです。似ていますが大きな違いもあるので、興味のある方は見比べてみることをオススメします。
対抗者
対抗者とはライバルのことです。
大きく括ると敵対者と同じ対立者に属します。
たい こう【対抗】
大辞林:対抗
(1)互いに張り合うこと。負けまいとして競い合うこと。
(2)競馬や競輪で、本命に次ぐ実力があると予想されるもの。
ライバル
大辞林:ライバル
互いに相手の力量を認め合った競争相手。好敵手。
敵対者が正面から主人公とぶつかるのに対して、対抗者は主人公と並走してどちらが先に目的に到達するのかを競う相手になります。主人公同様に敵対者を排除しようと動くので、時には協力し時には対立することもあります。協力者と敵対者の両方の性質を持っているのです。
敵対者との比較のイメージとしてはこんな感じ。
主人公→←敵対者
主人公→
対抗者→
一つしかないイスに主人公とライバルどちらが先に座れるかという感じですね。
敵対者と同様に主人公に対するアンチテーゼになりますので、主人公と対立することでテーマを強調できます。
それでは、対抗者を作る時のポイントを3つ紹介します。
ポイント①目的の具体化や指標になる
主人公が目的を作る際に、対抗者がいると一つの基準になります。
例えば、『テストの点数が前回クラスで2位だったから、次は1位の小林君を越えられるように頑張ろう』という具合です。
他にも、『好きな鈴木君を狙っている女子がたくさんいるけど、友達の由紀ちゃんには負けたくない』みたいなのもありますね。
こういった競争によって目的が具体的されるだけでなく、成果が高まることも実証されています。
「ピア効果」とは、仲間や同僚などがお互いの行動、生産性に影響を与え合うことをいいます。ピア(peer)は、年齢・地位・能力などが同等の者、同僚、同輩、仲間を意味する英語で、教育分野などでよく用いられる用語です。一般的には、能力や意識の高い仲間が同じ環境に集まり、お互いに切磋琢磨し合うことで、集団のレベルアップとともに個々の成長に相乗作用をもたらす効果のことを言い、これを“正のピア効果”と呼んでいます。
HRペディア「人事辞典」:ピア効果
対抗者の能力は主人公と近いことが重要ということですね。
但し、競争相手に勝つことだけを目的にしてしまうと妨害や不正に繋がるので注意が必要です。
ここで実際に対抗者が登場する作品を確認してみましょう。
主人公 | 対抗者 | 敵対者 | |
ハリー・ポッター | ハリー・ポッター | ドラコマ・ルフォイ | ヴォルデモード |
ドラゴンボール | 孫悟空 | ベジータ | フリーザ |
僕のヒーローアカデミア | 緑谷出久 | 爆豪勝己 | 死柄木弔 |
SLAM DUNK | 桜木花道 | 流川楓 | 山王工業高校 |
NARUTO | うずまきナルト | うちはサスケ | 桃地再不斬 |
ポケットモンスター | サトシ | シゲル | ロケット団 |
遊☆戯☆王 | 武藤遊戯 | 海馬瀬人 | マリク・イシュタール |
るろうに剣心 | 緋村剣心 | 斎藤 一 | 志々雄真実 |
対抗者が目立つ作品は少年マンガが多く少女マンガは少ないです。これは少女マンガにおいて長期間活躍する対抗者が評価されにくい傾向があるからです。恋愛においてライバルの存在は不安を招き、強いストレスになりますから。
こうして確認すると、元は敵対者であった相手が物語の展開に合わせて対抗者に変化するというパターンが多いですね。
他人との比較で自分の位置がわかるからこそ、主人公と同じ目的を追いかける対抗者の存在は重要です。
ポイント②タイムリミットを設けて希少性を高める効果
競争相手がいない世界では、のんびりとマイペースに目的達成を目指すことができます。ゆっくり進めていても手に入れられる可能性が高いからです。
ですが例えば、年始に数量限定で配られる福袋を手に入れようとするとどうでしょうか?
開店前からできるだけ早く店頭に並ばなければいけませんよね。
このように同じ目的を競って手に入れようとする対抗者の存在は、物語に時間制限を与えてくれます。
主人公は先に手に入れられるのか? という謎や負けたくないという緊張感が生まれるのです。こういった刺激は物語を面白くするのに有効です。
また一つのものを多くの人数の人が求めるという状況はも表現できます。
不動産営業のテクニックで有名な言い回しがあります。
こちらの物件は他のお客様も検討されています。あ、もうそろそろ決まってしまうかもしれません。
少女マンガだと、主人公だけが恋する男子よりも、学校中の女子が憧れる男子を彼氏にできた方が嬉しいですよね。この場合だと、男子を狙う女子達が対抗者になります。
このように対抗者は目的達成に対してタイムリミットを設け、同時に目的の希少性を高める効果があります。
ポイント③魅力的なキャラクターが作りやすい
物語の登場人物を集めて人気投票をしたら、結構な頻度で対抗者が一位になります。
これは主人公がお客様の代弁者であり正しい存在であることが宿命づけられている一方で、対抗者は好き勝手な主張を許されていることにあります。好き勝手といってもめちゃくちゃではなく、対抗者なりの一本芯の通った信念が必要ですが。
二種類の主人公で考えると、対抗者は憧れ型主人公の特徴を持たせやすいのです。共感させなければならない主人公と比べて、努力している場面や心情を描かなくても済むので、そこが神秘性にも繋がっていますね。
また、登場するタイミングも作者の都合で考えられるので、一番助けに来て欲しい時に協力してくれるといった美味しい役割を与えやすいです。
但し、対抗者の過度な活躍は注意しなければなりません。
あくまでも主人公のための物語です。
対抗者をカッコよく描写し過ぎて、お客様が主人公に興味を持たなくなってしまったら、作品の寿命は尽きてしまいます。
物語としては、敵対者との戦いの途中に犠牲者になって退場してくれるのが理想です。なので、多くの作品で実際にそういった扱いを受けていますね。
注意点だけは意識して、魅力的な対抗者のキャラクターを考えましょう。
漫画やアニメなどでは、この対抗者の存在、使い方がシリーズ展開の鍵になり得ます。魅力的な作品には、魅力的な対抗者が存在しているのです。
超簡単!売れるストーリー&キャラクターの作り方 P209:沼田やすひろ
対抗者の具体例
ジャンプ最強のライバルキャラランキング(gooランキング)において一位に輝いたのは『ドラゴンボール』の対抗者・ベジータです。主人公の孫悟空と同じサイヤ人でありながら対照的な性格として描写されています。ベジータは冷酷でプライドが高いのです。
惑星べジータの王子として生まれたのにも関わらず、いつも悟空に先を越されてしまって憤慨しています。ただその自分への怒りがきっかけでスーパーサイヤ人になれたのだから、わからないものですね。
悟空とベジータはまさに宿命のライバル関係といえそうです。悟空はあまり気にしていないようですが・・・・・・。
簡単なあらすじ
ナメック星にて、宇宙の帝王フリーザの勢力と戦うことになった悟空の仲間達とベジータ。フリーザの手下やエリート部隊に苦しめられながらも何とか勝利を収める。しかし、フリーザの強さは別格でベジータは手も足も出なかった。絶体絶命の中で、悟空が現れる。悟空は仲間をフリーザに殺されたことに怒り、伝説の戦士・スーパーサイヤ人になった。力関係が逆転してフリーザは圧倒されることになり・・・・・・。
初登場した際には、残虐な悪役だったベジータも現在では子供もできて家庭を大切にする父親になっています。教育熱心なようで主人公の悟空よりも父親としては立派かもしれません。どちらも無職ですけど。
ベジータのキャラ造形には、対抗者にふさわしい要素が詰まっています。
主人公よりもストイックで能力が高いが、孤独でワンマンなため仲間の協力が得られずに最終的には敗れる場合が多い。最後は協力者になり、罪滅ぼしのために主人公のために命を捧げ死ぬ。
生き方の方針から、負ける原因、最後の散り際まで決まっているなんて完成された役割ですね。
判定者
判定者という役割は沼田やすひろ氏の『超簡単!売れるストーリー&キャラクターの作り方』には載っていません。
ですが、多くの物語において判定者が活躍するので紹介します。
物語用語としては、モラリスト(結論を下す人)という呼び方に該当します。プロタゴリスト(主人公)、アンタゴニスト(反対者)の対立の結果を判断する存在です。
裁判であっても、必ず裁判官が結果を判断しますよね。公平的に正しさを求めると、判定者が必要なのです。
ある意見が正しいか否かは、是非を誰が判断するかの問題、つまり「判断者は誰か」の問題と切り離すことはできない。
プロ弁護士の思考術 P.118:矢部 正秋
判断権のある中立の第三者がいない以上、「自分は正しい」と断ずるのは無意味である。たとえ他人の意見が残薄だったとしても、そのことと自分の意見が「正しい」ということとはまったく別である。
依頼者や犠牲者などの役割と比較したら、判定者は有名ではないので聞いたことがないかもしれません。ですが、過去に楽しんだ物語を思い出すと判定者が活躍していることに気付くはずです。
それでは、判定者を作る時のポイントを3つ紹介します。
ポイント①曖昧なできごとの成功指標になる
成功指標とは何でしょうか?
成功指標とは、ひと事でいうと、
主人公が、具体的にどんな条件を満たせば、目標を達成したことになるか?
です。ここでポイントになるのは、達成する条件は、必ず具体的でなければならないという点です。
「物語」のつくり方入門 7つのレッスン P.70:円山夢久
目的の達成条件が不明瞭な主人公だと、何を目指しているのかがわかりません。だから、ちゃんとお客様にわかるように伝えなければならないということです。
しかし、数値や明らかな勝敗がわからない状況では、決着の判断ができませんよね。そういった時に、代表である判定者を決めておくことで、一つの成功指標になるのです。
多数決などで多くの人間に判断される場面でも、特定の誰かを代表の判定者にすることで、物語の注目ポイントがはっきりとするので面白くなります。
例えば、芸術をモチーフにした物語があるとします。そこで、学生の主人公が抽象画を描きました。実際に作品が描写されても、大半のお客様は価値判断ができません。もちろん、芸術に精通している方はわかるでしょうが少数です。
そこで判定者の出番です。
主人公に芸術を教える先生が作品を観てしばしの沈黙の後に
『これ、本当に君が描いたの? 凄いね!』と驚きの表情を浮かべたらどうでしょうか。
曖昧だった主人公の作品の評価の是非が明確になりました。『芸術の先生に評価される』ことが成功指標になります。
このように、物事の是非を人間が判断しないといけない場合に判定者は活躍します。
また、主人公の行動の是非を判断する方法の内の一つが判定者によるものです。
展開による是非と判定者による是非
1.主人公がある行動をとった結果どうなったかを展開の善し悪しで是非を伝える。
2.主人公がある行動をとった結果どうなったかを判定者の判断で決める。
1は、主人公がある行動をとった結果、幸せになればその行動は正しいと解釈されます。2は、判定者が正しいと判断すると主人公の行動は正しいと解釈されるのです。
判定者の判断は説得力がなければならないので、その点は注意しましょう。
次は主人公が判定者の評価を狙い撃ちにする展開を考えてみましょう。
ポイント②恋愛はヒロインが判定者になる
先ほどの例は芸術の是非でした。
ですが、個人的な問題として考えると、もっとも頻出するのは恋愛ではないでしょうか?
恋愛関係においては、男女お互いが判定者になるのです。
恋愛はどちらかいずれかの好意だけでは、成り立ちません。両方が相手を受け入れられて初めてパートナーとしての関係を築くことができるのです。
一昔前までの少女マンガにおいては、恋愛関係が始まる前から成立するまでの物語が多かったですが、近年では既に恋愛関係が始まっている場合が多いですね。これは現実のマンガの読者が若い内に恋愛経験をしているからです。
さて、そうなると彼氏彼女の関係になるか? という判定から、
彼氏彼女としてふさわしいか? という判定になります。
前者は、様々な判定をしながら関係が一歩ずつ深まっていきます。
『知り合い→友人→親友→恋人未満→恋人』と出世魚みたいに関係性が変わります。
後者は、基本的には減点方式で様々な言動を交際相手にチェックされます。
特に男性主人公はヒロインと交際できた時点で油断しがちなので、愛想を尽かされない様に気を付けないといけません。
このように恋愛モノの物語において判定者という考え方は非常に便利なのです。
相手に良い判定をもらえるように、狙い撃ちする展開を考えましょう。
ポイント③感動を作りやすい
恋愛対象以外に最も判定者として多いのが、厳しい両親です。親は子供を教育するという立場もあり、常に評価を下してきます。
こういった認めてくれない存在を判定者として役割を持たせると感動を作りやすいです。判定者が認めてくれないシーンは2~3回あると強調できます。
仕組みとしては、物語の序盤で主人公の言動に対して否定的な立場を判定者に取らせます。そして、中盤では主人公が一生懸命問題に取り組んでいる姿を見せておきます。終盤になり、主人公と判定者が対立した際に、対立者が主人公の言動に対する評価を改めるのです。
認めてくれない(拒絶)→認めてくれる(意志が通じる)
このシンプルな変化ですが、強い感動を生み出すことができます。
もちろん両親以外の家族や師匠や友人のような存在にも応用可能です。
いずれにせよ、認めて欲しいのに認められないという強い感情を描写して、その気持ちが報われるという変化をさせることが重要です。
ただ、判定者の判断が変わった理由がないと説得力がないので気を付けてください。
判定者の具体例
『リトル・ダンサー』は2000年に公開されたイギリス映画です。
父親・ジャッキー・エリオットにボクシングを習わされていた少年・ビリー・エリオットが、バレエに興味を持ったことから物語は始まります。
舞台は1984年なんですが、当時はバレエは女性のためのものとされていました。厳格な父親が認めてくれるはずはありません。この父親が判定者にあたります。
この父親と少年である主人公との葛藤が質の高いドラマになっています。
今作は全世界で高く評価され、500万ドルという低予算でありながら、20倍にあたる1億ドルを越える興行収入を記録しました。売上だけでなく、全世界で50近い賞を受賞したのも素晴らしい映画だと保証してくれています。
簡単なあらすじ
ボクシングの練習場の側でバレエ教室が開かれていた。主人公のビリーは興味を持ち、父親に隠れてバレエを習う。一方で、父親は炭鉱の労働組合に入りストライキを行っていた。
息子が同性愛者の少年と交流していることをよく思わない父親は、ある日二人がボクシングのリングの上でバレエダンサーの衣装を着て遊んでいるところを目撃する。ビリーは言い訳せずに、父親の目の前で本気で踊る。その姿に心打たれた父親は判定者として、とある決断をするのだった。
頑固親父と判定者は相性がとても良いですね。
子供を思うからこそルールを押しつけようとする父親。ルールから逸脱して自由を求める子供。どこの家庭にもある構図です。
今作の判定者である父親は非常に無口です。そのため、思考は言葉ではなく行動で示すわけですが、とても感動させられるんですよね。
認めてくれない(拒絶)→認めてくれる(意志が通じる)
判定者といえば、この展開の流れが鉄板であると覚えておいてください。
庇護対象
庇護対象という役割も沼田やすひろ氏の『超簡単!売れるストーリー&キャラクターの作り方』には載っていません。
ですが、知っていると便利な役割なので紹介します。
庇護欲(ひごよく)
実用日本語表現辞典:庇護欲
他者を保護しようとする心情を指す言葉である。これは、他者が困難や危険に直面している時、自身がその人を守り、支えようとする感情である。庇護欲は、親が子を守る母性や父性、友人や恋人を守りたいという感情、あるいはリーダーが部下を守るといった場面で見られる。
庇護対象は主人公が庇護欲を向ける相手のことです。守るべき、導かなければならない対象です。
今まで紹介してきた協力者と援助者との関係を比較します。
主人公を助けてくれる関係→援助者
主人公と持ちつ持たれつの関係→協力者
主人公が助けてあげる関係→庇護対象
わかりやすいですね。
それでは、庇護対象を作る時のポイントを3つ紹介します。
ポイント①本能的に守ってあげたくなる三原則
人間が本能的に守ってあげたくなる対象は赤ちゃんと考えても良いでしょう。赤ちゃんは誰かが面倒を見てくれないと一人では決して生きていけないからですね。
そんな赤ちゃんをヒントに庇護欲を抱かせる性質を考えてみましょう。
庇護欲三原則
1.幼い
2.小さい
3.弱い
この三原則のいずれかを持っていれば、主人公が守る対象としていても違和感がありません。逆に考えてみたらどうでしょうか?
主人公が自分よりも『年上で、大きく、強い』キャラを守る。
変ですよね。
特別な事情がなければ、庇護対象は三原則の要素を持っている方が自然です。
雨に打たれて、衰弱している、ふやけたダンボールに入っている幼い子猫
庇護欲がそそられますよね。そういうことです。
また、視覚的な要素も加えれば『可愛い』というのも当てはまります。
赤ちゃんの可愛さは『ベビースキーマ』と呼ばれています。簡単に説明すると『体型のバランス』、『目が顔の下の位置にある』、『おちょぼ口』などの視覚的情報が可愛さに繋がっているという説ですね。動物行動学者であるコンラート・ローレンツが提唱しています。
猫を可愛いと感じる仕組みもこのスキーマの影響です。
三原則に話を戻すと、主人公が戦う少年キャラクターであれば、ヒロインにいずれかを持たせることで庇護欲を掻きたてることができます。ヒロインが可愛いければ、庇護欲はより強くなりますね。
『病人・後輩・高齢者・女性・子供・ペット』などが代表的な庇護対象です。
ポイント②主人公を振り回す存在『困ったちゃん』
キャラクターの役割として面白い考え方があるので紹介します。
「困ったちゃん」というのは、主人公がもっとも苦手だなぁと思う人、文字どおり主人公を困らせる人のこと。そういう人物を主人公の身近に、たとえば職場とか、家とか、ご近所とかに、ポンと放り込んでやればいいんです。
「懐かしドラマ」が教えてくれるシナリオの書き方 P.34: 浅田 直亮 、仲村 みなみ
(中略)
ほらね、とりあえず何かアクションを起こすでしょ。それが「動く」ってことなんです。
主人公が苦手な相手を側に置くことで、何らかのアクションを起こさせようする方法です。その苦手な相手が『困ったちゃん』なんですね。
この『困ったちゃん』を庇護対象にすると相性が良いのです。
主人公は庇護対象を守らなければなりませんし、放っておくことができません。なので、苦手だからといって離れることができない。守らなければならない対象が、困った存在であるというのは面白い構造です。
例えば、子供嫌いな30代一人暮らしの男性主人公が、姉の息子の面倒を見ないといけない状況になったとしましょう。ただでさえ、子供嫌いなのにその少年が『困ったちゃん』なのです。勝手に部屋に入るし、飾ってあるフィギュアのパッケージを破ってしまいます。家から追い出したいと思いつつも、姉との約束もあるので許されません。
このように庇護対象を『困ったちゃん』にすると事件の予感がします。庇護対象が良い子すぎると面白くならないということですね。
主人公は庇護対象を負担に感じつつも、しっかりと助けてあげる。そういった描写があることで、お客様は主人公に好感を抱くのです。
ポイント③枷になる
自分のことだけを考えていれば良い状態と、誰かを守りながら動かないといけない状態では、できることが全然違います。
例えば、一人であれば50m走を7秒台で走れても、幼稚園児と手を繋ぎながら走るとタイムは大幅に遅くなります。
2008年頃に週刊少年ジャンプで連載された『べるぜバブ』(著:田村隆平)という作品では、主人公は赤ん坊を背負っていました。喧嘩っ早い不良でしたが、背中の赤ん坊を気遣って中々全力で戦うことができません。
これが枷です。
かせ【枷】
岩波 国語辞典:枷
罪人の首や手足にはめて自由を束縛する、昔の刑具。転じて、人の行動を束縛する邪魔物。
主人公に枷をかけることで行動が制限されます。行動が制限されると、いつもなら簡単にできることが難しくなり、工夫や知恵が求められます。
ゲーム実況で縛りプレイが人気なのも、実況者の機転が面白いからですね。
例えば、買い物袋で両手が塞がっている状態で、家の鍵を開けるにはどうしたら良いか? みたいな問題が出てきます。
家族がいれば、インターホンを肘で押して開けてもらう方法がありますね。
庇護対象はこういった枷の役割を果たすのです。
先ほど例に出した50m走でも、手を繋ぐのではなく幼稚園児を背負うと短時間で走れるかもしれません。制限によって創意工夫が生まれ、そこにキャラクターらしさが発揮されるのです。
こういった枷の良いところは、枷を外した時の解放感にあります。
マンガ『べるぜバブ』においても、主人公は赤ん坊を背負っていない状況では思う存分暴れ回っていました。
庇護対象が何らかの枷になる→枷を解放する
これは『抑圧と解放』というテクニックなので覚えておくとお得ですよ。
庇護対象の具体例
『バルス祭り』で有名なジブリ映画『天空の城ラピュタ』(1986年)。この映画は宮崎駿監督が小学生時代に考えていた架空の作品が骨子になっているらしく初のアニメオリジナルの監督作品です。
今でこそジブリ映画の中でも好きな作品ランキング一位に選ばれたりもしますが、公開当初は興行成績が低かったことでも有名。
主人公のパズーが命がけで守る庇護対象のシータは三原則だと、『弱い』が当てはまります。あとは外見が『可愛い』のも重要です。ただ今は可愛くてもこの先どうなるかはわかりません。
女船長・マ=ドーラも若い頃は美人だったのですから。
簡単なあらすじ
鉱山町の見習い機械工の少年パズーは、ある日空から舞い降りてきた不思議な少女シータを助ける。その少女の胸元には『飛行石』といいう浮力を持つ鉱石があった。その特別な石を狙う海賊や政府機関に追われながらも、パズーは必死にシータを守ろうとする。しかし、大人の力には叶わず、シータは連れ去られる。パズーは海賊と協力してシータを助け出し、飛行石が指し示す『ラピュタ帝国』に向かうのだった。
まさにシータは庇護対象という印象です。
物語の創作術が載っている本の中には、主人公の恋愛対象であるヒロインを『協力者』に分類するものと『敵対者』に分類するものがあります。なぜそのように考えが分かれるのでしょうか?
協力者になる理由→主人公にプラスの影響を与えるから
敵対者になる理由→主人公の障害になるから
どちらも一理ありますね。恋愛をサブにする物語は前者、メインにする物語は後者でしょうか。
ちなみに私は、ヒロインの役割は庇護対象と判定者を組み合わせるのが適切と考えています。
全ての役割を通していえることですが、絶対的な基準はありません
自分の創作ライフが楽しくなるかどうかで判断してくださいね。
おわりに
ここまで読んでいただき、ありがとうございます!
当初は10の役割すべてを一つの記事にするつもりが長くなってしまいました。
今回のアイキャッチ画像にあった
【役割を途中で変えるだけで、簡単にどんでん返しが作れる!?】の説明をします。
役割は10種類ありますが、大きく分けると【視点人物・味方・対立・変化】の4つです。変化は物語によって、味方の場合も対立している場合もあります。
なので、【主人公・味方・敵(対立)】と考えるのが一番楽ですね。下に画像あるので参考にしてください。
物語の中で、【味方→敵】や【敵→味方】に変化すると、どんでん返しになるというわけです。
例えば、味方ブロックである【協力者・犠牲者・援助者・庇護対象】の中で役割が変化しても、どんでん返しほどのインパクトは生まれません。大きく括れば味方であることには変わりないからです。
ですが、【犠牲者→敵対者】とか【対抗者→援助者】のように大きな枠組みが変わると意外性が強まるのでお客様に大きな衝撃を与えられます。
ちなみに【犠牲者→敵対者】は『BLEACH』の『藍染惣右介』、【対抗者→援助者】は『魔法少女まどか☆マギカ』の『暁美ほむら』が当てはまりますね。どちらも強烈などんでん返しでした。
みなさんも自分が好きな作品のキャラクターの役割を分類してみて、どういった機能を果たしているのかを確認してみてください。
複数の役割で迷ったら両方の要素があると念頭に置いておくと楽ですよ。
月見物語神社:夜更け
ウチが援助者って
よくわかったやろ?
そうね♪
深く理解したいから
案内されていた作品も
観てみようかしら?
オレは大体全部知ってましたよ
すごいじゃない結!
――で、小説の一行目は浮かんだんか?
いえ、11種類目の役割を
探求しようと考えています
月狐先生を越えたいので
なんでウチに張り合うねん!
対抗者気質なんで
まぁ、ええわ
ほな賽銭入れて帰りなはれ
お賽銭はないんだけど
こんなのはどう?
ほお、月見団子ですか!
ええやんけ!
みんなで食べよ♥
アカン
全部ウチのや!!
デブメンター・・・・・・
ダメンター・・・・・・
鳳堂 志幻
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参考資料:
・ゲームシナリオの書き方 基礎から学ぶキャラクター・構成・テキストの秘訣 佐々木智広(著)
・シナリオライティングの黄金則 ー コンテンツを面白くする ー 金子 満 (著)
・「物語」のつくり方入門 7つのレッスン 円山夢久 (著)
・超簡単!売れるストーリー&キャラクターの作り方 沼田やすひろ (著)
・「懐かしドラマ」が教えてくれるシナリオの書き方 浅田 直亮・仲村 みなみ (著)
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