【構成】ストーリーの美学

ストーリー
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公開日 2024年1月24日 最終更新日 2024年1月24日

<ruby>実門<rt>みかど</rt></ruby>
実門みかど

――でね
集まっていた警官が
みんなあたしに敬礼けいれいしてくれたの♪
どう? 面白かった?

<ruby>結<rt>ゆい</rt></ruby>
ゆい

・・・・・・いえ全く

<ruby>実門<rt>みかど</rt></ruby>
実門みかど

えーっ!
この話みんなに好評なのよ?

<ruby>結<rt>ゆい</rt></ruby>
ゆい

確かに話のネタは興味深いですが
話し方に問題があるかもしれません

<ruby>実門<rt>みかど</rt></ruby>
実門みかど

じゃあ、結が見本みほんをみせてくれるかしら?

<ruby>結<rt>ゆい</rt></ruby>
ゆい

良いでしょう

<ruby>月狐<rt>つきこ</rt></ruby>
月狐つきこ

なんやなんの話してるんや?

<ruby>実門<rt>みかど</rt></ruby>
実門みかど

お月ちゃん、こんばんは!

<ruby>結<rt>ゆい</rt></ruby>
ゆい

これはオレがコンビニで
バイトしてた時の話です

<ruby>月狐<rt>つきこ</rt></ruby>
月狐つきこ

ほぉ

<ruby>結<rt>ゆい</rt></ruby>
ゆい

当時オレは朝番だったので
早朝6時から9時までの3時間勤務でした

<ruby>月狐<rt>つきこ</rt></ruby>
月狐つきこ

えらい早くから働いて

<ruby>結<rt>ゆい</rt></ruby>
ゆい

それで少し早く店に着かないといけないので
勤務時間の15分くらい前に家を出たのですが
日は昇っていませんでした

<ruby>実門<rt>みかど</rt></ruby>
実門みかど

まだ少し暗かったのね!

<ruby>結<rt>ゆい</rt></ruby>
ゆい

自転車で店に向かっていたのですが
何か事件があったようで
目の前にパトカーが数台止まっていて
警察官の方々が集まっていたのです

<ruby>月狐<rt>つきこ</rt></ruby>
月狐つきこ

なんや怖いな?

<ruby>結<rt>ゆい</rt></ruby>
ゆい

丁度、坂を登る途中だったのですが
朝日あさひが差してきたのでまぶしくて
思わず目の前に右手をサッとかざしたのです

<ruby>月狐<rt>つきこ</rt></ruby>
月狐つきこ

へぇ、ほんで?

<ruby>結<rt>ゆい</rt></ruby>
ゆい

すると警察の方々が勘違いしたのでしょうね

<ruby>月狐<rt>つきこ</rt></ruby>
月狐つきこ

ふむ

<ruby>結<rt>ゆい</rt></ruby>
ゆい

全員が一列に並んでオレに敬礼したんですよ

<ruby>実門<rt>みかど</rt></ruby>
実門みかど

ふふふ♥

<ruby>月狐<rt>つきこ</rt></ruby>
月狐つきこ

キャキャッキャ♪

眩しくてかざした手を
敬礼と勘違いしたんや!

<ruby>結<rt>ゆい</rt></ruby>
ゆい

ええ
思わず顔から火が出るかと思いましたよ
恥ずかしくて急いでペダルをいで店に向かいました
冬だったのに全身から汗が吹き出し暑かったです

<ruby>月狐<rt>つきこ</rt></ruby>
月狐つきこ

おもろい経験やん!
――って結は高校生やから

その話は作り話やんな?

<ruby>結<rt>ゆい</rt></ruby>
ゆい

話の元ネタはミカねぇの体験です

<ruby>実門<rt>みかど</rt></ruby>
実門みかど

なんであたしが話したらつまらないのに
結が話したら面白くなったのかしら?

<ruby>月狐<rt>つきこ</rt></ruby>
月狐つきこ

それは構成やな!

<ruby>実門<rt>みかど</rt></ruby>
実門みかど

構成?

<ruby>月狐<rt>つきこ</rt></ruby>
月狐つきこ

結の話はオチに向かって
無駄なく情報が整理されてるんや
ほんで、最後は意外性がある
これが面白い話のポイントやね!

<ruby>実門<rt>みかど</rt></ruby>
実門みかど

あ!
あたし途中で警官とか敬礼とか
オチが予想できる話をらしていたかも・・・・・・

<ruby>月狐<rt>つきこ</rt></ruby>
月狐つきこ

同じ話でも順番を変えることで価値が変わる
今回は構成について教えたるわ!

<ruby>実門<rt>みかど</rt></ruby>
実門みかど

良い構成の方法を教えてあげようかしら?

『ああせい、こうせい』なんてね♪

<ruby>結<rt>ゆい</rt></ruby>
ゆい

つまらないことばかり口走くちばしって・・・・・・

ミカ姉に『はんせい(反省)』を『ようせい(要請)』します!

構成を知るとプロットは作りやすくなる

以前の記事でプロットの有用性や構成の種類を紹介しました。
今回はそこで紹介した構成を深く理解ができるように比較検討ひかくけんとう致します。物語の構成の方法論はいくつかありますからね。自分に合っている方法を見つけましょう。

構成力は作家に強く求められる要素で、新人マンガ家の評価軸として設けている雑誌もあります。前に調べたマンガ賞の12誌中3誌、25%の雑誌で構成力が注目されていました
(『ジャンプSQ 新人漫画賞 SPARK』『月刊少年マガジンコミック大賞』『ゲッサン新人賞』)

マンガ雑誌における評価軸をチェック

物語においての構成とはエピソードの並べ方(順序)や長さを決めることです。
どんな面白い話でもオチがバレバレだったり話の展開が遅すぎたりしたら退屈になってしまいかねません。また尻切しりきれトンボのような未完結な作品や竜頭蛇尾りゅうとうだびのような最初だけ盛り上がって後半失速する作品になってしまうことを避ける必要もあります。

また、エピソードの並べ方の順序を間違えれば因果関係が逆転し、テーマが伝わらないこともあるでしょう。

例えば、昔話『桃太郎』で、おじいさんやおばあさんといった村人が鬼に苦しめられている描写や説明があれば、鬼退治に向かう桃太郎に正当性が生まれます。

しかし、鬼が平和に暮らしているところに、桃太郎が現れれば侵略行為になってしまうのです。お客様には事前に鬼の悪行をしっかりと知らせておく必要があります。

他にも構成で長さを失敗したらどうなるでしょう。
二時間のサスペンスドラマで、開始一時間で犯人が捕まってしまったら? 後から真犯人が出てこないのであれば、大失敗ですよね。

このように物語を生かすも殺すも構成次第なのです。
あなたの伝えたいことが最大限発揮される構成を選びましょう。

さて、それでは構成の定義について調べてみましょう。

こうせい【構成】
各部分を集めて、または各部分が集まって全体を組み立てること。その組立て。

岩波国語辞典:構成

少しわかりづらいので、物語創作においての構成の役割を考えてみます。
構成は主に3つの特徴で形成されています。

1.要素・・・・・・名称と内容。どう描くか
2.順序・・・・・・要素の順番。どれから描くか
3.長さ・・・・・・要素の配分。どれだけ描くか

最初の『要素』とは、各部分の名称と内容のことです。どう描くかを意味しています。
例えば、『起承転結きしょうてんけつ』は『起』とか『転』という要素に分けられますよね。これが名称であり、内容ごとに呼び方が変わります。他にも『セイブ・ザ・キャット(BS2)』という構造では、『お楽しみ』や『心の暗闇』なんて要素もあります。

次は『順序』です。どれから描くかですね。構成には並びが厳格に決められているものもあれば、柔軟性の高いものもあります。『ヴァージンの旅』では何度も繰り替えし同じ要素が出てくるのが特徴の構造です。

ただ、『起承転結』では『起』が最初で『結』が最後という決まりがありますね。最初と最後だけは決まっている構造も多いです。

長編作品を起承転結で考える場合は、最初の起の中にさらに起承転結を入れる入れ子いれこ構造を採用する人もいますね。

承転結
→起承転結
→起承転結
→起承転

ちなみに構成と似ている言葉に構造があります。使い分けについて説明します。

構成→中身や部分。部分がメイン。全体はサブ。
構造→全体の仕組み。全体がメイン。部分がサブ

最後に『長さ』について。どれだけ描くか。
構成の中でも見落とされがちなのがこの長さです。例えば、物語の本題に入るまでが遅すぎたり、主人公の問題が解決しているのにダラダラと展開するとお客様は不満を感じてしまいます。

特に近年のお客様はタイパ(タイムパフォーマンス)重視なので、最初の数秒・数行・数コマで心を掴まないといけません。冗長な冒頭では評価されないので気を付けましょう。

各要素には、内容に適した長さというものがあります。
ちなみに有名な起承転結ですが、それぞれの要素の配分は等しくありません。

× 起(25%)・承(25%)・転(25%)・結(25%)
 起(15%)・承(70%)・転(10%)・結(5%)

実は圧倒的に承が多いのです。なので、シナリオ・センターでは『起・承1・承2・承3・承4・承5・転・結』みたいな構成で教えていますね。

最後にシナリオ・センターの創設者・新井一氏の孫である新井一樹氏の著書から引用します。

構成というのは、創作というクリエイティブな行為の中で、ロジカルに頭を使います。構成を理解すると、物語はいまの百倍つくりやすくなります。なぜなら構成は、クリエイティブを制限するものではなく、あなたのクリエイティビティを解放するものだからです。

構成術なしで創作に挑むというのは、暗い洞窟の中を、目を凝らしながら進むようなものです。つまずいたり、引き返したり、何とか頑張りますが、途中で足をくじいて動けなくなってしまいます。

一方、構成を理解していると、あなたは、洞窟の中に松明たいまつを持って進めます。道に迷っても、松明を照らして、進むべき道を見つけることができます。
構成とは、松明です。あなたが主人公とともに歩むべき道を照らしてくれます。

シナリオ・センター式物語のつくり方 プロ作家・脚本家たちが使っている p.159:新井一樹

前回の記事で簡単に説明しましたが、今回は少し踏み込んでみていきましょう。

提唱者特徴
三幕構成シド・フィールドアメリカ古典的
セイブ・ザ・キャット(STC)ブレイク・スナイダーアメリカエンタメ重視
ヒーローズ・ジャーニー(HJ)クリストファー・ボグラーアメリカ男性神話・通過儀礼
ヴァージンの旅(VJ)キム・ハドソンアメリカ女性神話・承認欲求
13フェイズ構造金子満かねこみつる&沼田やすひろ日本成長の説得力
汎用はんようストーリー構成DK先生日本娯楽性の追求
序破急世阿弥ぜあみ日本芸能共通
起承転結楊載ようさい中国有名
構成に役立つ構造論一覧

こうしてみると、日本はあまり構造論が発展してこなかったことがわかりますね。
一方で映画大国であるアメリカは多くの構造論が発展しています。これは映画が、莫大な予算をかけるため失敗できない表現媒体であることと関係があります。

また日本とアメリカの創作方法にも差があります。
日本はスタジオジブリの宮崎駿みやざきはやお監督を代表とする『1人の天才が全てを考える』方法が主流で、アメリカは『多くスタッフや脚本家たちが協力して考える』という文化があります。

それぞれの長所短所を考えてみましょう。

メリットデメリット
1人で作る個性的な作品が生まれやすい。芸術性が高いクオリティの当たり外れが大きい
チームで作る安定したクオリティが生まれやすい。娯楽性が高い個性が平均化され平凡になりがち
1人で作る? みんなで作る?

アメリカには既に脚本術が発展する土壌どじょうがあったということです。
一方で日本はマンガ大国ですよね。

マンガは1人の作家の思想や感情が反映されやすく、それぞれの作品が個性的で魅力があります。世界的にみても現在は日本のマンガが注目されていますね。
Netflixネットフリックス』でも『ONE PIECEワンピース』や『ゆうゆう白書はくしょ』が評価され、今後もマンガの映像化が期待されています。マンガやアニメで一度成功しているからこそ、大金を掛けて映像化に踏み切れるということです。

他にも日本の作家は物語創作に必要なのは技術ではなく芸術と考える人が多いので、中々周囲に広める文化が育たなかったというのもあります。残念ながら論理的に議論することができずに感情論におちいってしまう人もたくさんいます。

こういった表現媒体の差や建設的な意見を交わす能力の低さが、日本がアメリカに比べ創作術が遅れを取っていた理由として考えられます。

ですが、金子満氏と沼田やすひろ氏の『13フェイズ構造』や、今ネットで注目されているシナリオライター向けセミナー講師のDK先生の『汎用ストーリー構成』の登場で日本の物語創作業界が大きく進化・発展するかもしれません。

個人的には先生たちの構造論が、既存のハリウッドの構造論に負けているとは思いません。
むしろ、本質的なのにわかりやすくて役に立つと信じています。

ただ日本の構造論の歴史は始まったばかり。
これらを学んだ若き作家が新たな法則を見つけ出す可能性もあるのです。その構造を用いて作られた作品はきっと多くのお客様を魅力するでしょう。

作家は、あなたかもしれませんね。

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ここからは似ている構造を比較検討していきます。
それぞれの詳しい説明は別の機会を用意するとして、今回は特徴的な部分の違いをみていきましょう。

まずは脚本術のルーツであるシド・フィールドの三幕構成。こちらはセイブ・ザ・キャットのブレイク・スナイダーも影響を受けていると言及しています。

比較してすぐにわかるように、三幕構成はルールが少ないですね。これは作家にとっては自由と不安を与えるでしょう。逆に、セイブ・ザ・キャット(以下、BS2)はルールが分単位で決められており、窮屈きゅうくつさと安心感を与えてくれます。

あとは三幕構成がどんな作品にもあてはまる理論なのに対して、BS2は提唱者のブレイク・スナイダーがハイコンセプトの作品を好んでいたこともあり、ワールド(エンタメ重視の構造になっています。

特に第二幕前半にある『お楽しみ』の要素は他の構造論で指摘されていない重要なポイントです。お楽しみとは、その作品の売りになる娯楽性の高い表現をお客様に提供する部分です。

ちなみにBS2は小説にも適応できますし、専用の書籍もあるので興味がある方は参考にしてみてください。

↑ハイコンセプトについてはこちらで解説しています

↑画像クリックで拡大します↑

『ヒーローズ・ジャーニー』という構造は有名ですね。
就職活動を経験した方であれば、この理論にのっとって自己PRピーアールしたことがあるかもしれません。物語創作よりもビジネスにおいて有名なこの構造は通過儀礼の物語として説得力があります。

簡単に説明すると、『狭い世界で平和に生活していたダメダメな自分が、とあるできごとをきっかけに非日常的な世界に飛び込み苦労したが援助者や仲間による助けを得て乗り越えるも、絶体絶命の大きなピンチに陥り過去の経験から学んだ教訓を元に乗り越えて、最大の試練に挑戦して成功して今がある』みたいな物語です。

有名な人の自己紹介ってこんな感じになってませんか? これが子どもから大人になる通過儀礼の物語ですね。『私は神に選ばれ英雄になったのだ』という主張です。だから神話の構造と呼ばれています。

もう1つの構造は『ヴァージンの旅』です。
こちらは日本ではあまり有名ではないですが、知っていると使い勝手の良い構造です。

映画学校の映画・テレビ脚本家養成講座に通っていた40歳を過ぎた主婦が発明しました。元々学校では男性的な物語であるヒーローズジャーニーが教えられてのですが、それに疑問を持ったことがきっかけで女性的な構造論を考えたそうです。

ヴァージンの旅は、『本当の自分らしさを隠して社会に溶け込んでいた主人公が、「秘密の世界」でありのままの自分らしさを育て、本性を社会に認めさせることができた時に、自己実現の夢を叶える』という物語ですね。主人公と所属している共同体の両方が成長するという特徴があります。

ちなみに女性的な物語だからといって主人公が女性である必要はありません。本当の自分らしさを抑圧していた主人公が、自分らしさを発揮する物語であれば活かすことができます。おっさんのヴァージンだってあり得るのです。

それでは2つの構造を比較してみましょう。

ヒーローズ・ジャーニーヴァージンの旅
神話男性神話女性神話・お伽噺とぎばなし
物語の種類成功物語成長物語
コンセプトハイコンセプトソフトストーリー
主人公の変化前自己保身:臆病自己喪失:服従
主人公の変化後自己犠牲:勇敢自己実現:自尊
障害愛(過保護)
問題外面的な問題を解消する内面的な問題を抱える
世界冒険の世界秘密の世界
スタイルストーリー重視ドラマ重視
マンガ少年マンガ少女マンガ・青年マンガ
代表映画『ロード・オブ・ザ・リング』
『マトリックス』
『ライオンキング』
『キューティ・ブロンド』
『リトル・ダンサー』
『シンデレラ』
ヒーローズ・ジャーニーとヴァージンの旅の比較

2つとも他の構造論と異なり、目的がはっきりと分かれています。
ドラマ重視の作家がヒーローズ・ジャーニーを使ったり、ストーリー重視の作家がヴァージンの旅を使うと期待する効果は得られないでしょう。逆に考えると、自分が表現したいことに適合していると魅力的な物語を作りやすいといえます。

あなたの物語に上手く取り入れて、力強いプロットを構成してくださいね。

↑画像クリックで拡大します↑

最後に紹介するのは日本生まれの構造です。

13フェイズ構造は、東京工科大学の金子満氏のラボで研究されて発表された「プロット構成」です。フェイズとは、局面や変化の段階を意味します。

13フェイズ構造は、『主人公が説得力のある変化をすること』を重視しています。13段階のフェイズがあることで人間が本能的におもしろいと感じるという理論です。
ここが他の構造論との大きな違いです。

カネコイズム』の継承者で、シナリオ・アナリストである沼田やすひろ氏は、『BS2(セイブ・ザ・キャット)はコメディ作品向けとしては有用』と主張されていて、主人公の成長を表現するには向いていないと考えられています。なぜでしょうか?

それは、成長には2つの葛藤が必要だからです。

成長葛藤(第二幕前半)→苦境の中でなんらかの助けを得て問題を解決する
破滅葛藤(第二幕後半)→破滅の中で1人で問題を解決する

つまり、誰かの協力を得て解決するだけでは真の成長とはいえないのです。1人で問題を解決して初めて一人前ということですね。

さて、続いてX(twitter)で様々な創作論を発信されているDK先生の汎用ストーリー構成についてみていきましょう。

一目で、13フェイズ構造とセイブ・ザ・キャットの血脈がある構造だとわかりますね。
第一幕の構成数はセイブ・ザ・キャット(BS2)の5段階と同じで、機能名は13フェイズ構造と似ています。

他にも『ドラマベクトル』『成長葛藤と破滅葛藤』『ファースト10』『シチュエーションカーブの形状』が13フェイズ構造と共通していますね。

他の構造の良い部分を取り入れて改良させる工夫があります。

シチュエーションカーブの形状に注目

さて、次は相違点について考えみましょう。

まずは、各機能名の違います。
汎用ストーリー構成は徹底的に執筆者に寄り添っている親切設計で、一枚の画像で完結しているといえるでしょう。機能名も具体的に何を書けば良いのかが明確でわかりやすいです。

顕著けんちょなのが幕をまたぐ際の名称ですが、他の構造が『プロットポイント』や『フェイズポイント』、『ターニングポイント』とわかりにくいのに対して、汎用ストーリー構成は『つかみ終わりポイント』と『たたみ始めポイント』と一瞬で役割が理解できます。

他にも機能の解説が一行と無駄がなく何をしたら良いかが具体的です。

登場 主人公について書く
初動 主人公の決意と覚悟をさせる
難問 新たな問題を発生させる

例に挙げた『難問』はいわゆる『ミッドポイント』のことですが、物語の起伏を作るためにも『新たな問題を発生させる』とわかりやすく簡潔に表現されています。ややこしいカタカナ用語ではなく、日本語で統一してくれているのも嬉しいですね。

また13フェイズ構造と汎用ストーリー構成にはどちらも『ファースト10』という用語があるのですが、若干解釈が異なるようです。

ファースト10(10分〈全体の10分の1〉)で、
 13フェイズ構造→【⓪背景①日常②事件】を描写してお客様の心を掴む
 汎用ストーリー構成→【①登場②背景③発端④目的⑤初動】を描写してお客様の心を掴む

つまり、汎用ストーリー構成の方が早く多くの情報を出してお客様の興味を惹くことを推奨すいしょうしていますね。少しでも早く物語の美味しい部分を提供しようとする姿勢は、スピード感を重視する現代的な考え方です。

また、助けのある部分とない部分の名称の差もあります。

13フェイズ構造→助けのある成長葛藤・助けのない破滅葛藤
汎用ストーリー構成→助けのある順風満帆パート・助けのない苦難続きパート

13フェイズ構造は主人公の成長や状態を意識、汎用ストーリー構成は状況の起伏を意識しているように感じられます。ここはセイブ・ザ・キャット(BS2)のエンタメ重視の考えが反映されているのかもしれないですね。

この日本産の2つの構造は互換性ごかんせいがあるので、両方学ぶとそれだけ理解が深まります。海外の脚本術も良いですが、やはり日本で誕生した理論を扱えるのは嬉しいです。

ただし、DK先生の汎用ストーリー構成は、書籍や動画で学ぶことができないようです。以前一度、Xのスペース機能で詳しい解説をされていたので、運が良ければ聞けるチャンスがあるかもしれません。他にもセミナーや小説ライトノベルレベルアップ講座などを行っているようなので、興味がある方は調べておいでくださいね。ちなみに、DK先生はXで毎日無料で創作に役立つ最先端の情報発信もされているので要チェックです!

【中古】コンテンツを面白くするシナリオライティングの黄金則 /ボ-ンデジタル/金子満(単行本)

ここまで読んでいただき、ありがとうございます!

最初の引用にもありましたが、構成は物語創作において論理的な部分です。
そのため、作家によっては情熱で一気に作品を書き上げた後に、改めて構成でバランスを整える方法を取ることもあります。有名なのは村上春樹氏ですね。

また、構造論は勉強みたいに堅苦しいと感じるかもしれませんが、それぞれの提唱者の情熱と美意識によって生まれています。苦手意識がある方は一度ダマされたと思って使ってみてください。

なぜ、ここでこんなシーンを描かないといけないの?

その秘密は構造を使って自分の作品を読み返した時に初めて明かされるかもしれません。

今回の内容が少しでもあなたの物語創作の悩みを解消させることをお祈りしています。
みなさまの創作ライフにさわやかな東南の風が吹きますように★

月見物語神社:夜更け

<ruby>実門<rt>みかど</rt></ruby>
実門みかど

色んな種類の構造があるのね♪

<ruby>月狐<rt>つきこ</rt></ruby>
月狐つきこ

作品で表現したいことに合わせて
使い分けてもええで

<ruby>結<rt>ゆい</rt></ruby>
ゆい

構成の初心者はどれから手を出すと良いんですか?
ヒーローズ・ジャーニーはストーリー重視で
ヴァージンの旅はドラマ重視で
セイブ・ザ・キャットはワールド重視でしたよね

<ruby>月狐<rt>つきこ</rt></ruby>
月狐つきこ

せやな
どんなスタイルにも対応できるから
13フェイズ構造か汎用ストーリー構成がオススメやよ

<ruby>実門<rt>みかど</rt></ruby>
実門みかど

日本産の脚本術が気軽に学べるなんて嬉しいわ♥

<ruby>月狐<rt>つきこ</rt></ruby>
月狐つきこ

ええ時代になったもんや
昔はこういった創作術は師匠から弟子にだけ
伝えられる秘伝やったわけやからな!

<ruby>実門<rt>みかど</rt></ruby>
実門みかど

あ!

先生がスペースで創作術を発信してるわ!
じゃあ、お月ちゃんまた明日ね♪

<ruby>月狐<rt>つきこ</rt></ruby>
月狐つきこ

ちょっ、自分はウチの弟子ちゃうんかい!
あぁ、行ってもうた・・・・・・

<ruby>結<rt>ゆい</rt></ruby>
ゆい

仕方ないですね
オレが代わりに聞いてあげますよ

<ruby>月狐<rt>つきこ</rt></ruby>
月狐つきこ

実は今ウチが考えているんは
キャラクター重視の構造やねん

<ruby>結<rt>ゆい</rt></ruby>
ゆい

ほぉ

あえて挑戦しますか

じゃあ今すぐ教えてくださいよ

<ruby>結<rt>ゆい</rt></ruby>
ゆい

今年中!?

オレもミカねぇと帰れば良かったです

管理人<br>鳳堂 志幻
管理人
鳳堂 志幻

電子書籍を出版しました

興味のある人は是非お手に取りください

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参考資料:
・シナリオ・センター式 物語のつくり方 プロ作家・脚本家たちが使っている 新井一樹 (著)
・映画を書くためにあなたがしなくてはならないこと シド・フィールドの脚本術 シド・フィールド (著), 安藤紘平 (翻訳), 加藤正人 (翻訳), 小林美也子 (翻訳), 山本俊亮 (翻訳)
・SAVE THE CATの法則 SAVE THE CATの法則 ブレイク・スナイダー (著), 菊池淳子 (翻訳)
・SAVE THE CATの法則で売れる小説を書く ジェシカ・ブロディ (著), 島内哲朗 (翻訳)
・面白い物語の法則〈上〉 強い物語とキャラを作れるハリウッド式創作術 クリストファー・ボグラー&デイビッド・マッケナ (著), 府川 由美恵 (著)
・新しい主人公の作り方 ─アーキタイプとシンボルで生み出す脚本術 キム・ハドソン (著), シカ・マッケンジー (翻訳)
・シナリオライティングの黄金則 ー コンテンツを面白くする ー 金子 満 (著), 長尾 康子 (編集)
・超簡単!売れるストーリー&キャラクターの作り方 沼田やすひろ (著), 金子満 (読み手)

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