プロットを作る狙いと効果について

プロット
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公開日 2023年9月13日 最終更新日 2024年7月27日

今回のテーマは「プロットを作る狙いと効果について」です。

プロットとは、簡単にいうと筋立てです。

より分かりやすくかみ砕いていうと『話の筋や論理の展開の仕方』『作品内容の配列』です。つまり『計画(予定)表』ですね。

言うなれば、料理を作る際の手順を書いているレシピ旅行する時の地図に近いイメージです。

何もヒントにしないで料理するよりもレシピ通りに作る方が安心できますし、旅行の際に手あたり次第に動き回るよりも目的地を決めて歩いた方が無駄がありません。

今回の記事は、プロットに対して苦手意識を持っている人に、その狙いや効果を伝えることで有用性を体感してもらう目的があります。

プロットの作り方には様々なフォーマットが存在します。

今回は名称と簡単な特徴だけをお伝えするのに留めます。何故なら、詳しく説明すると各種本一冊では済まないからですね。

私が提供しているサービスのお客様の中にも、プロットが嫌いだったり苦手意識が強かったりする方が多くみられます。

是非、苦手意識や食わず嫌いを払拭して創作ライフを楽しみましょう。

■はじめに

プロットは必要か否か?

――この議論を始める前に重要なのは、現在創作において困っているかどうか? を顧みることです。

既にプロットを活用していて問題ない人は、そのまま続行していきましょう。ですが、プロットを立てられずに悩んでいる人は、活用する道を検討するのも悪くないはずです。

要は『目的を達成するために便利であれば使う、不便なら使わない』意識が重要です。

ちなみによく「プロットなんていらない」と考えている作家がいますが、彼らは頭の中でルービックキューブを揃えるが如く、展開のつじつまを合わせるのが得意です。

ミステリー作家の宮部みゆき氏なんかもその一人で、頭の中だけで整合性を取ることができる天才です。通常の小説ならいざ知らず、ミステリーでプロットが不要なのはレベルが違いますね。

もし、あなたがそういった天才の内の一人ならプロットは必要ないでしょう。

感覚的に、「いつ」「何を書くべきか」というのを理解しているのですから。

ですが、多くの作家はプロットを立てずに作品を『ライブ感』で執筆してしまうと、『矛盾だらけ』『支離滅裂』『意味不明』『一貫性が乏しい』な仕上がりになってしまいかねません。

何も考えずにその時の気分で料理をしたら失敗してしまいますし、予定を立てずに旅行をすると目的地に辿り着く前に時間制限がきてしまう恐れもあります。

ちなみにプロットの話をすると必ず現れる意見があります。

それは、「プロットに縛られると『頭でっかち』になってしまうから、使うべきではない」といった意見です。

これは正しい意見だと思いますか?

もちろん、正しい意見ですね。

何故なら、『プロットに縛られると』という前提条件があるからです。

逆にいえば、プロットに縛られなければどうでしょうか?

縛られずに参考にするという程度に留めておくいうことです。それならば、極めて有効なツールとして活用できます。

プロットは『計画(予定)表』でしたよね。

予定は未定です。絶対ではありません。なので作品を執筆している途中に、通過点や目的地を変えたくなればいつでも変更可能なのです。

――旅行をしていて。

目の前に美味しそうなお店があるのに、予定表に書いていないから行かない。

曇っていて美しい景色が見れないだろうけど、予定表にあるから行く。

風邪を引いていてしんどいけど、予定表に書いてあるから、プラン通りに全てを実行する。

バカげてますよね?

目的と手段が逆転してしまっています。

旅行の目的は『楽しむこと』です。『計画を遂行すること』ではありません。

多くの作家にとって、魅力的な作品を書くためにはプロットが必要なのです。

道具というのは目的があります。プロットも創作においての道具に過ぎません。役に立つかどうかという観点で考えてみましょう。

初めは慣れないかもしれませんが、プロットの活用は何回か試している間に馴染んできます。それでも自分に合わないと思えばプロットなど作らなくても良いのです。

面白い話があります。

『頭でっかちになるな!』という人は大抵の場合は自分が頭でっかちです。

なぜ「プロットを作ると頭でっかちになる」という考え方を持っているかというと、「自分自身がプロットに縛られて頭でっかちになっちゃった」経験があるからでしょう。

もし、あなたが柔軟に対応できるなら相手にする価値もない意見です。

それでは、現在プロットについて悩んでいる前提でどうすべきかを説明させていただきます。

1.プロットの種類はいくつあるの?【前半・基本編】

A.起承転結

B.序破急

C.三幕構成

D.ヒーローズ・ジャーニー

F.ヴァージンの旅

G.セイブ・ザ・キャット

H.13フェイズ構造

有名なのはこれくらいですね。

物語創作をしていない方でも起承転結くらいは聞いたことがあるでしょう。

特にA・B・Cはそれぞれ近い構造なのでまとめて説明します。

まずが一番シンプルなのがC.三幕構成です。

これは「最初」と「最後」があり、その「中間」があるというものです。

構造というか当たり前のことをいっているだけの気がします。

ですが、「最初」と「最後」に変化がなければ、ダラダラと展開しているだけです。物語を作る時に、必要な逆算的思考について意識できるのは良いところですね。

※三幕構成は厳密には、一幕目「設定」、二幕目「対立」、三幕目「解決」と書くべき内容自体も定められています。

シンプルな三幕構成ですが、幕を跨ぐ際の「ターニングポイント」や中間部分です「ミッドポイント」、第二幕前半と後半にある「ピンチ」などの概念も含めれば複雑になります。

初心者の内は、「最初と最後とそれを繋ぐ中間がある」で良いでしょう。

続いてB.序破急です。

これは三幕構成に似ていて「序・始まりがあって」「破・それが展開していき」「急・急に終わる」構成です。

イメージとしては勢いよく盛り上がっていき、ピークを過ぎたら萎むみたいな感じですね。物語におけるテンションを考える際に有用です。

そして、ようやくA.起承転結です。

これは作文や小論文などを作る際に、教えてもらった人も多いと思います。

三幕構成や序破急と異なり、四つの要素で構成されているので少し複雑です。

起→始まり

承→展開

転→変化

結→終わり

こういった感じですね。

先ほどの二つの例と異なり、【変化】があるのが注目ポイントです。物語の展開の途中に意外性が必要という主張です。

単調になるのを防ぐ効果があるので、役に立ちます。

慣れない間は起承転結の結から考えると簡単です。

つまり、主張や結論といった「結局何が言いたいのか?」から始める方法ですね。その結論を効果的に見せるために起・承・転を使うのです。

ゴールから先に作るとは、物語の場合は「主人公がラストにどうなるか?」を意味します。

これも逆算的思考ですね。

1.結 主人公が魔王を倒し伝説の勇者になる

2.起 主人公は平凡な村人の少年

3.承 冒険に行き、仲間を集めて、強くなる

4.転 魔王との戦いで仲間達が全員倒される

この順番に物語を考えます。

そして、書く時にはそれを並び替えて――

平凡な村人の少年である主人公が、冒険に旅立って仲間を集めて強くなり、

最終決戦で仲間が全員倒されるも、魔王を倒し伝説の勇者になる物語。

注意ポイントは、起承転結の配分がそれぞれ等しくないです。

三幕構成の場合は、一幕目と三幕目がそれぞれ全体の四分の一。二幕目が長くて、全体の半分です。

上記の図に当てはめると、起承転結は以下の通り。

起→全体の四分の一(三幕構成では一幕目)

承→全体の二分の一(三幕構成では二幕目)

転・結→全体の四分の一を分け合う(三幕構成では三幕目)

つまり、起承転結の転の部分は、三幕構成でいう三幕目に切り替わる部分ですね。

シナリオライターの新井一は、

【起・承1・承2・承3・承4・承5・転・結】みたいに教えています。

わかりやすいですね。それにしても承が全体の80~90%という考え方なのが面白いですね。

ちなみに起承転結は中国の漢詩が元になっています。序破急は日本芸能の雅楽の楽曲の三部構成に由来します。三幕構成は古代ギリシャの哲学者・アリストテレスが発祥という説もありますが、現在使われているのはハリウッドの脚本家であるシド・フィールドのものです。

中国→起承転結

日本→序破急

米国→三幕構成

それぞれの違いや共通点を考えると興味深いです

ちなみにどれが正しいのか、と問われれば全部正しい答えになります。考え方に矛盾がないからですね。

どれが一番オススメか?

私は三幕構成がシンプルで好きです。

『最初』と『最後』を考える。

――では、どうすれば二つを繋ぐことができるか、『途中』を考える。

シンプルですよね。

ちなみに先ほど三幕構成で軽く述べた「ミッドポイント」ですが、これは長い第二幕の途中に変化を作るための考え方です。

図の第二幕の前半と後半で曲線が山のように変化してますよね。

目標が達成できそうと思いきや、一転して遠ざかるという変化があります。

「シンデレラ曲線」を見ていると三幕構成ではなく四幕構成という気がしてきますね。

ですが、あくまでも第二幕前半と後半を『途中』と大きくまとめるのが三幕構成なのです。

2.プロットの種類はいくつあるの?【後半・応用編】

さて、次からはハリウッドや日本で生まれた脚本術について説明します。

まずは有名なD.ヒーローズ・ジャーニーです。意味は『英雄の旅』ですね。

この創作方法は日本ではビジネスで有名になりました。自己アピールする時に、とても都合が良いフォーマットだからです。

簡単に説明すると、

平凡な生活をしていたら、事件が起きて、逃げようとしたら、メンター(師匠)が現れて手を引っ張ってくれて、非日常の世界に飛び込み、様々苦難を得て教訓を学んだものの、大きなピンチが訪れて、大切なものを捨てることで上手く行き始めて、日常世界に戻ってきて成功して今に至る。

――みたいな感じです。

昔の自分から大きな試練を乗り越えて今の自分がある、通過儀礼の物語ですね。

ちなみに、段階としては12あります。いきなり増えましたね。

ややこしく感じるかもしれませんが、これだけ多いので何をすべきかが明確で作っていて迷うことがないのが良いところです。

次はF.ヴァージンの旅ですね。これはハリウッドのシナリオ教室に通っていた主婦が考案した構造です。実績がないのにこんな理論を組み立てるなんて凄い才能ですね。

元々ハリウッドではヒーローズジャーニーという一人前の男性になる物語みたいな構造しかなかったのです。それを著者は疑問視して、女性の物語もあるはずだと考えたのが理論を発明したきっかけのようです。

ヒーローズジャーニーが12段階なのに比べて、バージンの旅は13段階です。

ちなみにバージンとは、【社会に押さえ込まれて本来の自分の輝きを発揮できない存在】のことです。

なのでおっさんだけどヴァージンはあり得ます。

物語の構造を簡単に説明すると、

自分らしさを発揮できない主人公が、秘密の世界で自分への愛を取り戻して、

社会に大きな貢献と変化をもたらす。

――ですね。ドラマ重視の映画や少女漫画に多い構造です。

冒険に出る→ヒーローズジャーニー

定住して自分らしさを伸ばす→ヴァージンの旅

こう考えると分かりやすいですね。

次は出ましたG.セイブ・ザ・キャット。超有名で実践的なのでハリウッドでも使われている最新のフォーマットです。著者はブレイク・スナイダー。

この構造の優れている部分は、物語のジャンルを10に分けて、それぞれの意識すべきポイントも明記されている所です。

《10のジャンル》

1.家のなかのモンスター

2.金の羊毛

3.魔法のランプ

4.難題に直面した平凡な奴

5.人生の節目

6.バディとの友情

7.なぜやったのか?

8.バカの勝利

9.組織のなかで

10.スーパーヒーロー

レンタル映画を借りる時のようなジャンルとは違って、構造的に分類されているので要注意です。

最近は映画も複雑化しており、複数のジャンルを混ぜて一本作るということもありますね。

ちなみに構造としては15段階あり、もっとも多いです。その分、どこで何をするべきかが明確なので、初心者の内は非常に助かります。

そして、真打ちH.13フェイズ構造。これは日本で生まれた理論です。東京工科大学の金子満先生のラボで研究されて発表された構造です。

シナリオアナリストの沼田やすひろ先生が詳しい書籍を数冊著されています。

『フェイズ』とは局面、つまり場面のことで、13の場面があるということですね。

他の理論と異なり、主人公の変化に説得力を持たせるというテーマがあります。

簡単にいうと主人公は二つの葛藤を経験するというものです。

一つ目は『成長葛藤』。

問題に直面した際に、助けを得て解決するというもの。

助けのある葛藤。第二幕前半にあります。

二つ目は『破滅葛藤』。

主人公一人で問題に直面して、絶対絶望の経験をするというもの。

助けのない葛藤。第二幕後半にあります。

この二つの葛藤が成長には必要という主張が独特ですね。

簡単に13フェイズ構造の説明をすると、

⓪背景 ①日常 ②事件 ③決意

④苦境 ⑤助け ⑥成長 ⑦転換

⑧試練 ⑨破滅 ⑩契機 ⑪対決

⑫排除 ⑬満足

――こういった流れですね。『⓪背景』を含めると14フェイズじゃないかって? 良い質問ですね。背景はない場合もあるので、カウントしません!

ちなみに13フェイズ構造は私も愛用していて、最近書いている小説に採用しています。

縦軸が時間で横軸が空間です。

今回は主人公の3つの13フェイズ、サブキャラ2人にそれぞれ13フェイズを作りました。

実際に書く時は、これらを参考にします。

こうやって表にすることで、頭の中だけでこれを構築するのがどれだけ難しいか分かったと思います。

なので、構造を使えるのであれば活用するに越したことはないですね。

◆ヒーローズ・ジャーニー

ヴァージンの旅

◆セイブ・ザ・キャット

◆13フェイズ構造

■おわりに

プロットについて簡単に説明しましたが、いかがでしたか?

何か新しい発見や気付きがあれば嬉しいです。

おさらいしましょう。

プロットを作る狙い→迷わないための『予定表』として活用する

効果→それぞれの構造によって違う作用がある

正しいか、間違っているか?

ではなく、役に立ちそうであれば使う。

そういった距離感が重要かもしれませんね。

実際にプロットを参考にして書き進めていると、足りない部分や過剰な部分が出てくると思います。

なので、その都度修正して臨機応変に対応してください。

こういったツールはあなたの創作活動を縛るものではなく、より高く飛べるための踏み台のようなものです。

苦手意識や食わず嫌いは勿体ないですよ。

それでは★

◆私は普段はココナラでは物語創作のアイデアを提供するサービスを行っています。興味がある方はご確認ください。

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